| ロード4日目(18日) 小川がマークをかわして銅メダル 大城が歴史的6位入賞
2006IPC世界選手権もいよいよ最終日。この日も朝から雨が。午前のレースは女子のクラスが多く、かなりつらそう。なおこの日午前に行われたCP4ロードレースに出場予定だった石井だが、16日のTTでの疲れからめまいなどの体調不良が出たため前日にドクターの診察を受け、その結果ロードレースは不参加に。 本人は出たい気持ちがあっただろうが、将来のことを考えれば賢明な選択であるし、本人及び他の選手の安全を考えた場合無難な判断だった。
この日午後レースがある小川と大城・高橋ペアがWCCに到着した午前11時前後から空は明るくなってきた。やがて雨もやみ、路面も乾いて日本チームには好都合に。これで全力が出せるはず。結果、そうなった。
小川が出場するCP2ロードレース(2周回23.2キロ)は午後1時45分スタート。小川は落ち着いた表情でスタートラインについていた。
いきなり飛び出したのが、TT金メダルのDavid Stone(英)。まるでTTのよう。まだ25歳と若いStoneの逃げには誰もついて行けず。Stoneはこのまま逃げ切って2つ目の金メダル。その平均時速はなんと34.57キロ!驚異的だった。
Stoneを追うようにして第2先行になったのがオーストリアの新鋭Helmut Winterleitner。
これに反応する選手はおらず、遅れて小川、Mark Le Flohic(豪)、Riaan Nel(南ア)の3選手が集団を形成しラスト1周へ。3選手はいずれもこれまでの国際大会メダリストで、特に豪のマークは日本選手団にもおなじみ、これまで圧倒的な強さを誇ってきた。この中では小川はやや不利かと思われた。

スタート直前まで小川に指示を出す監督ら |

新鋭2人が抜け出したため
過去数年のメダリストが激しい3位争い |
「レース中はすごく落ち着いていた」とレース後小川が振り返ったとおり、冷静にマークを追い、時に揺さぶりをかける。やがてNelが脱落。小川とマークの銅メダル争いになり、最後500メートルほどの直線へ。ここで小川がスパートするとマークはついて行けず、小川がリードする姿が日本チームスタッフの目に飛び込んできた。歓喜する日本チーム。長年勝てなかったMark Le Flohicを直接対決で破って見事に銅メダルを獲得した。スタッフ全員が駆け寄って小川を祝福。アテネパラリンピック銅メダル後も驕ることなく、1人黙々と地道な練習を連日連夜繰り返してきた小川がその実力を見事に発揮してくれた。その姿勢はもう立派の一言。敬意を表したい。石井も小川も根っからの自転車好きなのだろう。

班目監督とがっちり握手 「祝杯挙げましょう」 |

表彰台でガッツポーズ |
小川に続けとばかりに意気込んだ大城・高橋ペア。大会の最終種目となる男子視覚障害タンデムロードレース(9周104.4キロ)は40組出走と最大の激戦。スタート直前に予想しなかったアクシデント発生。ストーカーのハンドルがロードレースの規定に反するので認めない、とバイクチェックで言われた。(他にも同じことを言われていたチームがいくつもあった。)
愕然とする大城・高橋。4日前のロード監督会議では何も言われていなかったが、突然の厳しい通達。(今年からこの件については厳しく徹底されるようになったとのこと。) 急遽、権丈コーチのサポート用ロードレーサーのハンドルを外してタンデムに取り付けることに。
「スタート7分前」 刻々とカウントダウンが進み、岩井メカだけでなく班目監督ら全スタッフが権丈のハンドルを強引に外しキャノンデール(大城のタンデム)に取り付ける作業をスタート・ゴールエリアに位置するコミッセール車両の前で行っていく。大会技術委員(TD)のLouis Barbeau氏が見かねたのか作業中の日本スタッフの中に飛び込んできた。「俺も手伝ってやる」と言わんばかりにおもむろに自身が所有するカッターをパチンと取り出し権丈のハンドルについてるバーテープやワイヤーを一気にカット。その時、あまりにも勢い良く切りすぎたのか、Barbeau氏は左手人差し指をカット。鮮血が飛び散った。
とにもかくにも、文字通りギリギリでハンドルを付け替え、何とかスタートエリアに。果たして無事に走れるのか、不安しかなかった。
しかしその不安は危惧でしかなかった。大城・高橋ペアは大集団の中で好位置を占め、時には先頭を引っ張った。巧みな高橋の駆け引きと技術、そしてそれについていく大城。周回中、見た目以上にきつい陸橋の上りでも大城は余裕の表情を浮かべていた。今日の2人はこれまでとは全く違う。5周6周と周回を重ねペースがかなり上がっても(1周11.6キロを14分台でまわっていた!)その表情は変らない。世界最高のレベルに2人はしっかりとついて行っている。期待と願いが膨らむ。

きつい陸橋を上る集団 後方に位置する大城ペア チャンスをうかがう |
スペインペアらが逃げを仕掛けるが決まらない。相変わらずハイペースで集団は続いた。
8周回目に伏兵ポーランドのKosikowski/Korcペアがアタックをかける。このペアにはノーマークだったのか、誰もすぐには反応せず。ヒョロヒョロ逃げかと思われたが集団との差を広げ、カナダのCote/Boilyペアが数百メートル遅れてこれを追いかけだす。集団はこのカナダペアのすぐあとに続いた。大城ペアもこの中にいてチャンスをうかがう。
ポーランドペアの逃げはそのまま決まり、まさかの金メダル。30秒ほど経つとカナダペアが。わずかの間を置いて大集団。巧みな位置取りから大城・高橋ペアもゴールスプリントで突っ込むが惜しくもメダルには届かず、それでも堂々の6位入賞。
これまで、全く歯が立たなかったタンデムロード。出走数も圧倒的に多く、環境にも恵まれた外国勢に割って入ることが全く出来なかった。しかし今回、大城・高橋が見事に6位入賞。歴史的な快挙だ。胸を張って良いだろう。次回はさらに上を目指して欲しい。
これで全日程が終了。日本選手は銀メダル2、銅メダル2、入賞3というこれまでに無いほどの好成績を収めることが出来た。
この日夜、ホテルのレストランで慰労と祝福をかねて全員で乾杯。楽しい話で盛り上がった。
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